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Kanye West/808s & Heartbreak

2008年発売
俺:「Kanye West、4作目の新譜が登場です」

友人:「おぉ!俺でも知っているヒップホップ・スター!」

俺:「この人はいつも斜め上を行くから面白い。ヒップホップが誕生して早数十年。(ヒップホップという音楽を)進化させることが出来る数少ない人だと思う」

友人:「珍しくベタ褒めだな。まぁ俺も同じで、いろいろヒップホップを聞くようになったけど、カニエさんはわかりやすいし、良い曲作る人だと思う」

俺:「聞きやすいよね。美意識的なセンスは微妙なところがあるんだけど、音楽的な才能は間違いなくある。しかし今回はまた予想を超えて違う路線で攻めてきたなぁ」

友人:「初め聞いたとき、『ついにヒップホップ飽きたのかな?』と思ったよ」

俺:「カニエならそう言ってもおかしくないけどね」

友人:「ラップしている曲なんてほとんどないだろ、これ」

俺:「ないね〜 ジャンル的には『R&B』のような歌モノ路線とも言えるけど、カニエなら『ポップス』だろうね」

友人:「え〜と、いままで通算…3枚のアルバムは繋がりがあったんだよな?カニエのトレードと言えるクマジャケットだったし」

俺:「自分の人生を3部作で表現していた。『the College Dropout(大学中退)』〜『Graduation(卒業)』としてアルバムタイトルになっているよ」

友人:「という事は、今回から必然的に新路線の前フリはあったワケだ。ラップを止めて歌いまくるとか」

俺:「本人の意図をはっきりは知らないけど、今回もタイトルがある程度状況を説明していると思う」

友人:「『808s & Heartbreak』…808sって何?」

俺:「ヒップホップやテクノを詳しい人なら知っていると思うけど、名機として名高いローランド社のTR-808という型番のドラムマシーンのこと。808を使った音楽という事を強調したいのかな?と推測してる」

友人:「ふむ…」

俺:「808は1980年発売なんだけど、今ではビンテージ楽器の部類だろうな。ある程度演奏が出来るようになるとジーンズやワインと一緒で、ビンテージが持てはやされる傾向はあるけど。有名なところではGibsonのLes Paulの58〜60年のサンバーストモデルとか。発売当初はそれほどでもなかったのが、エリック.クラプトンやレッド・ツェッペリンのジミー.ページの使用により今や恐ろしい価格で取引されるようになっているし」

友人:「Les Paulは知っている」

俺:「ローランド社もGibsonは今も名機の後継者を作り続けているから最新モデルも立派にある。けど、808みたいにドラムパターンを自由に作成できる楽器は当時、斬新だったと聞いているよ。だからこそ歴史に残る名機としてリスペクトしているからタイトルにしたんじゃないかな?」

友人:「へぇ…こう言った『モノ』に熱い情熱を捧げるのは男にしか分からんロマンだよなぁ」

俺:「今回は非常に内省的な作品で、ラップではなく歌をメインとしているところからもわかるように、アナログの優しい音色であるということが重要だったんじゃないかな?」

友人:「Heartbreakは?」

俺:「失恋とも訳されるけど、悲嘆という意味。有名な話だけど、カニエ母が最近亡くなったことと、婚約者と別れたことを指しているものと思われる」

友人:「悪いときは重なるものだな…」

俺:「でも言い方が悪いけど、真の表現者ならこれも一つのネタになりそうな題材ではある。事実、カニエはこれらの出来事を踏まえて、本来の作風から大きく離れた音源を出してきたんだし」

友人:「そうだな。ここで潰れたら多くのファンも悲しいしな」

俺:「そういうこと。一種の天才的な才能を持つ人だし、この人のラップや歌はお世辞にも上手いとは思えないけど、人を引きつける音を作る才能は間違いないでしょ。ヒップホップ業界に足りないのはこの人のようなポップセンスだと常々思っているから、まだまだ頑張って欲しい」

友人:「何も前情報なく、このCDを再生したときはかなり戸惑ったけどなぁ…今までと全然違うし」

俺:「戸惑うよね。ラップじゃなくて歌ものがあるとは聞いていたけど、それ以前に作風が全体的に暗い。声も儚いし…オートチューンの影響もあるだろうけど」

友人:「暗いじゃなくて、儚い。それだ。でもバックの音は相変わらず抜けが良い重さがあるんだけどな」

俺:「バックのドラムパターンはそう言うほど変わらない気がするな。そりゃあダフトパンクの曲をサンプリングしていた前作のイケイケ路線とは趣きが全然違うけど、この人の音作りは重いけど柔らかい音色をしている」

友人:「パッと何回か聞いた中では5曲目のパッカーションが良い感じ。これだけは全体的に儚い中で一人気を吐いているような曲だ」

Love Lockdown


俺:「シングル曲だよ。この曲、アルバム完成前からネットでアップしていたけど、ファンの反応を聞いて何回か修正していた。こういう柔軟性もカニエの魅力だろうな」

友人:「PV見てもメッセージ性と芸術性があるもんな。これがラッパーの曲としては洗練されているのもイイ」

俺:「すごいシンプルでスカスカなビートなんだけど、うねりがある。この人のトラックメイキングはテクノ/ハウスのノリもあるんだけどね。プロデューサーとしての才能だろうけど時代の嗅覚のよさを自分なりに解釈するのが上手い」

友人:「ふ〜ん…あまりにも変化して来たんで、このまますんなり受け入れるのは当ブログ的には認めがたいな…カニエの手中にやられているというか」

俺:「なんだよ、それ。別に良いんじゃない?どんな作品でも粗探ししてたら誰も読まないよ。ただでさえアクセス少ないブログなんだから」

友人:「売り上げ的にどうなの?以前ほど手放しで売れるとは思えないけど」

俺:「前回紹介したガンズのChinese Democracyと同じ週に発売されたけど、当アルバムが全米トップになりました。14年ぶりの今年一番の注目作とさえ言われたガンズでさえ、カニエには敵わなかった」

友人:「時代の変化を感じるな…」

俺:「カニエの作品はヒップホップ好きじゃなくて、音楽好きが評価していると思うな。店頭でCDを買うよりもアマゾンとかオンラインショップで購入する現代っ子という感じ」

友人:「…それは何?ガンズ好きな層はいちいち店頭に行って未だにCDを買う旧世代って事?」

俺:「そうだとは言わないけど、音楽好きってやはり日々新しい音源を探すだろ。そうなるとインターネットというツールは今の時代、必要になる」

友人:「まぁな…今回の歌いまくるという路線はちょっとびっくりしたけど、この時期に、このご時世でということを考えればすごいハマッてくる。真夏にリリースされたらちょっとどうかと思うが」

俺:「元はプロデューサーだけど、ラッパーとして世に出て、あえてラップを排除したのも凄いな。でもカニエだからこそ、この路線もありとして受け入れられるだけの説得力がある。次は何をしてくれるんだという期待が持てる。正直ラップも歌も飛びぬけて上手い訳ではないし、この道の専業に比較したらまだまだ弱いのに、この人自身が商売になるからね…」

友人:「いきなりこのアルバムから聞いてもカニエ自体に興味を持ちづらいかな」

俺:「それはある。この人が行ってきた過去の作品も振り返りつつ、この作品に触れてみたらいろんな意味で驚きはあるよね。それくらい長いキャリアで異色作品」

友人:「でも最初から人気あったんだろ?」

俺:「プロデューサーとして一際個性を放っていたからね。今でもこの人が自分名義で表に出てきてラップしたり、歌ったりするよりはプロデューサーとしている方が良いと思っている人も多いんじゃないかな?」

友人:「今後もこの路線って事はないよな?」

俺:「次回作はまたラップするということだよ。タイトルは『就職』だったかな?」

友人:「それはまたタイムリーな…GMの職員辺りが暴動起こすテーマソングになったり…」

俺:「それはない(苦笑) まぁ偶然だろうけど…世相といちいち噛み合っている辺りも名プロデューサーの才能なのかもね」

2008.12.29 /
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